「兵隊虫」って何?─ツマグロカミキリモドキの知られざる魅力─

○溝田 浩二1・初宿 成彦2・藤本 克文11北大・農・昆虫体系 2大阪市立自然史博物館)

  大阪の一部の地域ではツマグロカミキリモドキのことを「兵隊虫」と呼び、子供たちが本種を捕まえて肘の内側(時にはひざの裏や首筋)にはさんで潰す「兵隊虫勝負」という一風変わった遊びの文化がある。カミキリモドキ科甲虫の体内にはカンタリジンと呼ばれる毒性の強い物質が含まれているため、虫体を潰して体液が皮膚に付着すれば痛々しい水ぶくれ(水疱性皮膚炎)ができるが、子供たちはそれを覚悟で勝負に臨むわけである。水ぶくれができれば“負け”、できなければ“勝ち”というゲームで、一種の根性試しだと考えてよいだろう。ツマグロカミキリモドキは汎世界的に分布する著名な衛生害虫であり、普通であれば忌み嫌われるべき類のムシであるが、それを逆手にとって楽しんでしまう大阪人のユニークな発想と好奇心には感心させられる。この大阪特有の伝統的な昆虫文化の一端を紹介したい。

  また、発表者らは2000年2月に大阪市住之江区の貯木場でツマグロカミキリモドキの幼虫を多数採集し、それらを飼育することによって卵〜成虫までのすべてのステージを観察することができた。これまで国内ではほとんど生態に関する情報のなかった本種の生活史を、豊富なカラー写真を使って紹介する。さらに、実験的にカンタリジンを人体皮膚に塗り、その反応の変化を経時的に追跡することができたので併せて報告したい。