ミヤマクワガタ交尾器に見られるサイズの安定性

立田晴記(東大・農学生命科学・生物測定)・植村享裕・溝田浩二・秋元信一(北大・農・昆虫体系)

  ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus は雄の体サイズ、および大顎に著しい多型を示す。本種における各形態の変異性、体サイズに対する各形質の相対成長パターン、資源配分パターンを比較するため、我々は北海道内のいくつかの地域から雄47個体を採集し、体全体を頭部、前胸部、中胸─腹部、および交尾器とに分割し、各部位の乾燥重量を測定、解析した。

  その結果、交尾器以外の形質の頻度分布は有意に正規分布から外れ、かつ相対的変異の大きさ(=変動係数)も大きかった。中胸─腹部を体サイズの指標と見なしたときの相対成長パターンを比較したところ、頭部では正の、前胸および交尾器では負の相対成長パターンを示した。とりわけ交尾器では相対成長係数が小さかった。また全体重に対する各形質の重さの比の増減を比較したところ、頭部では体サイズが増加するにつれ資源配分の増加が見られたが、胸部、交尾器では減少した。また減少率は交尾器において著しいことが判明した。

  これらの結果から、ミヤマクワガタ雄の交尾器には体サイズに関わらず成長を抑制させる安定化選択が働いている可能性が示唆された。