マダラクワガタムシ属(鞘翅目:クワガタムシ科)のアフリカ大陸からの新発見

荒谷邦雄(京大・院・人間・環境)・溝田浩二(北大・農・昆虫体系)

  マダラクワガタ属のクワガタムシはこれまで旧北区、東洋区、新熱帯区の各動物地理区から記録されているが、今回、驚くべきことに、はじめてエチオピア区に属するアフリカ大陸中央部の低地熱帯雨林から、本種の1新種が記録された。採集されたのは雌1個体のみだが、この個体は、体型や触角、大顎、前脚基節間突起、眼縁突起、腹板などの形態においては旧北区グループと共通した特徴を持つ一方で、鞘翅の表面構造などは近縁属 Echnoassalus を含む東洋区グループの特徴を併せ持ち、既知の本属のすべての種と一見して区別できる。これまでに1つの属のクワガタムシが4つの動物地理区にまたがって記録された例はなく、今回の発見は生物地理学的にも大変興味深い。

  外部形態に基づく系統解析の結果からは、このアフリカ産の新種は、マダラクワガタ属の中でも旧北区グループと単系統をなすことが明らかとなった。旧北区グループとこの種の共通祖先種は、おそらくアラビア半島やサハラ地方が湿潤だったころに、ユーラシア大陸からアフリカ大陸に南下したものと考えられる。