金華山島の昆虫相 ─シカによって形成された特異なファウナ─
溝田 浩二・秋山 裕輔(宮城教育大・環境教育実践研究センター)

 金華山は宮城県牡鹿半島沖に浮かぶ面積10I、標高445mの小島である。ここには現在ではほとんど見ることができなくなった東北地方・太平洋沿岸地域における本来の自然植生(ブナ、モミ等)がよく保存されており、学術的に極めて貴重なエリアである。ところが、金華山には現在500頭を越すシカが生息しているため(すなわち、50頭/1Iの高密度)、その採食圧によって生態系全体が多大な影響を受けている。たとえば、金華山の昆虫相に関しては、@吸血性の種が豊富、A糞虫類が豊富、B腐肉食性の種が豊富、Cシカが不嗜好な植物をホストとする種が多い、といった特徴がみられるが、いずれもシカが高密度で生息していることに起因するものである。
 演者らは、植生の相違と地表徘徊性昆虫相との関係を調べるために、2002年春よりピットフォールトラップを用いたサンプリング調査を開始した。その結果、スギ植林、シキミ植林といった一般的に生物多様性が低いと考えられている「人工林」において、地表徘徊性昆虫相が豊富であることがわかってきた。その理由として、シカの採食によって森林の崩壊・乾燥化が進行している金華山において、上述の常緑樹の林床では1年を通じて日陰が提供され湿度が保たれている環境であるため、地表徘徊性昆虫類や土壌動物にとって避難場所(レフュージア)となっている可能性が考えられた。